アリエク経済学の連載も今回で35回目。今回は「購入者側にも見えないスコアがあるのでは?」という、私自身の実体験と推測を交えたお話です。あくまで個人の見立てであり、アリエク社が公式に認めた話ではない点を、先にお断りしておきます。
ご存じの通り、ストア(販売者)は違法商品の販売や規約違反を犯すと、アリエク社からペナルティを科されます。検索順位の低下、バッジの剥奪、ひどい場合はアカウント停止。これは公開された仕組みです。では、購入者側はどうでしょうか。こちらは一切開示されていませんが、私は「購入者にも内部的な評価が存在する」と推測しています。
根拠は私自身の経験です。私はかなりの頻度でアリエクを利用していて、返品もそれなりにあります。しかし、ネットでよく聞く「返金を拒否された」「アカウントを制限された」という経験は一度もありません。おそらく見られているのは返品の絶対数ではなく、購入数に対する返品率でしょう。母数が大きければ、多少の返品は健全な範囲に収まります。累計でどれだけ購入し、どれだけ手数料を生む顧客なのか——その積み重ねが、紛争時の対応の速さやクーポンの当たりやすさに表れているように感じます。
私は以前、BtoCサービスのCTOを務めていました。技術だけでなく、マーケティング戦略の設計にも携わっていた立場から言えば、優良顧客を厚遇するのはEC運営のいろはです。マーケティングの世界にはRFM分析という定番の手法があります。Recency(最終購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3軸で顧客を階層化し、上位層に手厚い施策を打つ。優良顧客には限定クーポンや先行案内を配り、離反しかけた顧客には呼び戻しのオファーを出す。こうした顧客セグメンテーションは、どのEC企業でも当たり前に行われています。
さらに視野を広げると、個人をスコアで評価すること自体は、海外ではとうにデファクトスタンダードです。とりわけアメリカはスコア文化が社会の隅々まで浸透しています。その象徴がクレジットスコア(FICOスコア)でしょう。個人の返済履歴・借入残高・利用年数などをおよそ300〜850点で数値化し、住宅ローンや自動車ローン、クレジットカードの審査はもちろん、時には賃貸契約や就職の場面にまで使われます。延滞すればスコアは下がって金利は上がり、誠実に使い続ければスコアは育って好条件を引き出せる。個人の信用を数値化し、その値に応じて優遇と条件を変える——この発想は、欧米では当たり前の社会インフラとして根づいています。アリババのようなグローバル企業が、こうした世界標準の考え方を知らないはずがありません。
この視点でアリエクを見ると、いくつも腑に落ちる点があります。安価な商品ばかりで利益貢献の薄い購入者と、定期的に相応の金額を落とす購入者。返品率が突出して高いアカウントと、購入数に対して返品が常識的な範囲に収まるアカウント。この両者を、プラットフォームが同じように扱うほうがむしろ不自然です。ストアをスコア化して優遇と冷遇を分けるのと同じ論理が、購入者側にも静かに働いていると考えるのが自然でしょう。
もちろん、これはあくまで私の推測です。ただ、CTOとして顧客データを扱ってきた経験から言えば、「見えない=存在しない」ではありません。あなたの買い物の履歴は、確実に「あなたという顧客の価値」としてデータに刻まれています。派手な裏技よりも、健全に、長く付き合うこと。それが結局いちばんの優遇につながる——これが私の結論です。
あくまでも意見論評の範囲で~、エスポエスポ!
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